コミック
九郎義経を扱ったコミックを紹介します。
なぜか打ち切り作品が多い(泣)ですが、そんな中にもキラリと光る良作がありますよ。

基本的に発表年の古いものから順にならべています。
■色の文字はオビや表紙、裏表紙などに載っている内容紹介文。
また★マークは管理人シャナリン独断の評価。
★★★★★(お気に入り)/★★★★(好き)/★★★(なかなか)/★★(う〜ん)/★(ごめんパス)
個人的に超オススメの作品は→が目印!

少年マンガ
少女マンガ
一般コミック
学習教養コミック
ゲスト出演コミック

少年マンガ(男性向けコミック)
タイトル
著者
ジャンル 出版社 発表年(初出)
ますらお
(全8巻)
(文庫版全5巻)

北崎拓
少年サンデー 小学館 1994〜96
数ある義経マンガのなかで個人的にダントツのおすすめ作品。愛を乞いながらも人を傷つけてしまう「荒ぶる少年」遮那王の苦悩が克明に情感豊かに描かれていて、心理ドラマとしても秀逸な上、絵が非常に美しく力強く躍動感があり、シーンごとにいちいち見とれてしまいます。切れ長の目の遮那王のなんと麗しいこと!読者を引き込んでゆくオリジナルエピソードも盛りだくさんで読みごたえがあります。粗野だけど熱くて一途な郎党たち、義経を執拗にライバル視する平維盛、優しい笑顔で義経を翻弄する頼朝など、脇を固めるキャラクター勢もみな個性的で魅力たっぷり。…なのに!こんな名作が打ち切り処分…あまりに尻切れトンボな終わり方。(一ノ谷合戦後あたり)未完の作品ですが完成度は高く愛読者も多い。ぜひとも再開を!
★★★★★
そして時は流れて2014年…まさかまさかの18年ぶり「ますらお」復活!(下記項目)「ヤングキングアワーズ」にて連載再開(14年2月号〜)。嬉しすぎ!
   
 
ますらお 秘本義経記
〜大姫哀想歌〜

北崎拓
ヤングキングアワーズ  少年画報社 2014
北崎先生ありがとう!「ますらお」をもう一度描いてくださってありがとう!!
18年の時を超え、当時の魅力はそのままに、ますます強く激しく美しくブラッシュアップされた新「ますらお」。これ以上好きになれないくらい好きだったますらお義経を、さらにもっとずっと好きになってしまいました。変わらなさが嬉しい弁慶・三郎・常陸坊に佐藤兄弟、美しさ大増量のキレッキレ静、いろんな意味でキレッキレ頼朝…皆愛しい。もちろんこの巻の「主役」大姫と義高も…。これほど生々しく胸に迫る、残酷なおかつ可憐な大姫義高物語はほかにない。コミックス書き下ろしの雑談ページには連載再開についての北崎先生の思いがつづられていて、ますらおファン必読です。華麗なカラーページが連載当時のままコミックスに収録されてるのもポイント高い。とくに意味深い巻末カラーページ…。続編となる屋島編「波弦、屋島」もヤングキングアワーズ2015年2月号より連載再開されて嬉しい限り。
★★★★★
 
ますらお 秘本義経記
〜波弦、屋島〜
(全5巻)

北崎拓
ヤングキングアワーズ  少年画報社 2015〜22 
 
※サイト休止後の情報追加のため管理人コメントは載せてませんが星は当然★★★★★です。
そして続編(壇ノ浦以降)の再開を熱く激しく待ってます。
修羅の刻
(7〜10巻)

川原正敏
少年マガジン 講談社 1997〜98
非力だけど素直でピュアな愛されキャラ義経とメチャクチャ強いワイルド弁慶、そして謎の青年武道家「陸奥」らが活躍するバトルチック少年マンガ。アツい内容ですが、シンプルな絵柄と大きなコマ割りのためか、ストーリー展開はゆったり大らかな印象。時代考証が徹底していてためになります。ちなみにここに出てくる頼朝と政子は目もあてられぬ極悪夫婦。特に政子の徹底的な悪人ぶりは他作品ではとうていお目にかかれません。政子ファン激怒必至。
★★★
   
源平伝NEO
(全4巻)

原作・あかほりさとる
画・別天荒人
少年エース 角川書店 1999〜01
あかほりさとる氏の同名小説のコミックヴァージョン。源平キャラを現代高校生に置き換えての学園サイキックバトル。ラブコメ要素が濃く、軽いノリで楽しめます。頼朝、義経兄弟が正統的にカッコ良く描かれててうれしい。頼朝はクール系イケメン、義経はカワイイ系の美少年でモテモテです。モテモテなのに硬派なシャイボーイ、というのがまたいい。源平マイナーキャラもきちんと取り上げられてて、おちゃらけた作風ながらけっこう綿密かつ斬新な設定が張りめぐらされていてぐっときます。ただ、これも打ち切りっぽい終わり方で残念…
★★★★
 
遮那王義経
(全22巻)

沢田ひろふみ
少年マガジン 講談社 2001〜07
2004年度講談社漫画賞受賞!
旅芸人の元気な少年・漂太がひょんなことから病弱な源氏の御曹司・牛若と入れ替わり、おごる平氏に立ち向かってゆく物語。お子様向けお下劣ギャグに友情・努力・勝利の3点セットがそろった典型的ストーリー展開…ベタな少年マンガ歴史絵巻かと思いきや、時代背景や設定などかなり緻密に描かれていて、個性豊かなキャラクター達も魅力的、独創性に富むエピソードが盛り込まれ、読み出すとぐいぐい引き込まれます。今後が楽しみな只今連載中の作品。
★★★
 
遮那王義経・源平の合戦
(全29巻)

沢田ひろふみ
少年マガジン 講談社 2007〜15
上記作品「遮那王義経」の続編となる“源平の合戦”編。奥州に身を寄せ源氏再起の時を待つ漂太こと義経のもとに伊勢三郎や弁慶、佐藤兄弟など個性豊かな男達が集い、またドジっ娘・ツンデレ・クールビューティーなどオリジナル女の子キャラも多数登場し、寄ってたかって義経を取り合います。これぞ少年マンガの醍醐味。この新シリーズは、そんな義経のもとに頼朝旗揚げの報が届くところから始まります。明るすぎる義経(漂太)のキャラはイマイチ萌えませんが、皆から愛され慕われる元気な義経というのはやっぱり見てて気持がいい。史実を離れたサイドストーリーのおもしろさもこの作品の大きな魅力です。打ち切りの憂き目に遭うことが多い「源平モノ」漫画の中、おそらくこれは最長連載の作品。完結を見届けられて幸せです。序盤の頃のおもしろさを思い返すと、ずいぶん急ぎ足かつ尻すぼみな寂しい終わり方を迎えてしまったな、というのが正直な感想ではありますが。
★★★
 

破戒王
〜おれの牛若〜
(全5巻)

たなかかなこ
ヤングジャンプ 集英社 2003
牛若丸は実は女のコ、という設定のアクション漫画。義経女性化は基本的に認めない私ですがこの牛若はOK!だってむちゃくちゃカワイイから。キリリと凛々しく勇ましく、なおかつ純情でナイーヴな絶世の美少女。五条大橋を根城に悪行の限りを尽くす破戒僧・弁慶は、そんな牛若にメロメロに…平家を倒せば牛若の「処女」をいただく、という条件で源氏に力を貸すことに。色情魔の大男とストイックな美少女、という組み合わせはギリシャ神話のオリオンとアルテミスのようで興味深い。ただ、青年向けコミックなのでエログロ満載。それも目を背けたくなるレベルの。おまけに登場人物も皆イカレてる、とくに平家の面々。「イメージぶち壊し!」と目くじら立てるよりこれはもう開き直って楽しむべし。と思ってたらアララ打ち切り…(鞍馬を出て奥州に旅立つシーンで終了)。ああもったいない。たなか氏描く頼朝が見たかったのに!きっと相当アブナイおいしいキャラになってたでしょう。
★★★★
   
源平天照絵巻 痣丸
(全4巻)

玉置一平
月刊コミックフラッパー メディアファクトリー 2004〜05
義経、弁慶、義仲…死したはずの源氏の者が不気味な仮面武者としてよみがえり暗躍する!主人公・悪兵衛(平景清)と巴御前がそんな不死身の源氏武者らと戦う物語。「痣丸」とは悪兵衛が持つ剣の名で、実は壇ノ浦で沈んだ草薙剣のこと。単なる源平物ではなく日本神話にまでさかのぼる壮大な伏線が張られていて今後の展開がすごく楽しみ…と思ったらこれも打ち切り。ガックリ…。戦闘シーンなどかなりリアルで過激な描写ですが、スタイリッシュな絵柄のためかさほどグロテスクじゃない。キャラクターたちの台詞やファッションもやたら現代的で(巴御前はショートカット!)、ヘヴィな内容とライトなノリが妙にマッチしてます。ちなみに義経は残酷なクールビューティーながら随所に人間くささを垣間見せてくれる「おいしい」悪役美形です。
★★★
 
義経ちゃん剣風帖
(全3巻)

小野寺浩二
ヤングキング 少年画報社 2005
邪悪な陰陽師・鬼一法眼によって封印されていた平安のヒーロー源義経が、平成の女子高生・静流の眼鏡(←なぜ?)に転生。静流は戸惑いつつもそんな義経のため鬼一法眼の放った刺客相手に白拍子姿で戦います。その敵はといえば、猫耳フェチにドジッ子フェチ、おさげフェチなど見るに耐えない変態妖怪どもばかり。なぜか犬に転生してしまった弁慶、プレッシャーに弱い“日の丸恐怖症”那須与一など脇を固めるキャラクターも強烈。下ネタギャグてんこもりのひたすら下品な「萌え」漫画です。でも、おもしろい…結構好きかも?ガラっぱちの熱血野郎・義経のキャラがいい。名乗りをあげて現れる平家の亡霊どもを「モリモリ(盛盛)うるせえ!」と叩き切るシーンなど最高に笑えます。しかしながら最終巻では義経の孤独な魂を救うべく戦う静流や弁慶たちの姿に不覚にも泣けてしまいました。笑わせておいて最後に泣かせるなんてニクイです。
★★★★
 
少女マンガ(女性向けコミック)
タイトル
著者
ジャンル 出版社 発表年(初出)
天よりも星よりも
(全8巻)
(文庫版全4巻)

赤石路代
ちゃおフラワーコミックス 小学館 1987〜89
謎の火事で両親を亡くした女子高校生・水守美緒はいとこの四条忠臣の家に引き取られますが、そこで次々に不思議な事件が起こり…?水をあやつる力を持つ美緒は、冷酷な火の使い手である忠臣に狙われ幾度も危機にさらされますが、同じ学校に通う女装の美少年・成宮澪が風を自在にあやつる力で美緒を救い、ともに忠臣に立ち向かいます。彼らは実は歴史上の人物の生まれ変わりなのですが、…以下ネタバレ注意!
…美緒は静御前、澪は源義経、そしてふたりをつけ狙う忠臣は…なぜか織田信長。どうせなら同時代の人物(頼朝とか)にすればいいのに?少女漫画特有の甘ったるい絵柄・作風ですが、全編に渡って「この人と出会うために生まれてきた」というシンプルかつピュアなテーマが一本気に貫かれており、少女向け転生ファンタジーロマンとして素直にワクワク楽しめる作品です。
★★★
   
源氏
(1〜8巻)
(文庫版もあり)

高河ゆん
ウィングスコミックス 新書館 1988〜93
16歳の高校生江端克己は、失踪した最愛の恋人・桜を探して異世界「日本国」に乗り込んだ!そこでは源氏と平家が日本国の統治権をめぐって長い戦いを繰り広げており、克己は夭折した源氏(頼朝)にうりふたつだったことから身代わりとして戦いにまきこまれてしまう。頼朝を慕う義経(ガラ悪いけど純情な美形)や頼朝の幼なじみ平清盛(これも美形)ら、さまざまな人物との出会いを通じて克己は成長してゆく…。シャープな絵柄と独創的な世界観で人気を博した未完の大作ですが、出てくる男性キャラが皆「こんな奴いねーよ」的乙女ちっくキャラで、同人誌臭がぷんぷんしてて、ハマる人とハマれない人とがくっきり分かれそう。正直私もちょっと…。源平人物の名を借りただけのあくまでもオリジナルなSFストーリーだと思えば別に腹も立たないが。
   
時代ロマンシリーズ
「霧雨有情」<第1巻収録>
「冬の落日」<第3巻収録>
以下続刊…

河村恵利
少女プリンセス 秋田書店 1991〜
オーソドックスながら骨組みのたしかな「読ませる」ストーリーと親しみやすいキャラクターが魅力的な「時代ロマンシリーズ」の源平関連作品。静と義経の不器用な純愛と頼朝の悔恨を描く「霧雨有情」、頼朝と敵対する義仲とその子義高を哀惜する義経の胸中に迫る「冬の落日」。登場人物たちをひとりたりともぞんざいにしない丁寧な作風には、実は少女マンガあんまり好きじゃない私も何ら不服はございません。ええ、たとえ義経が茶髪ポニーテールであろうとも。
★★★★
   
あぶない壇ノ浦
(あぶない丘の家シリーズ内)

萩尾望都
アスカコミックス 角川書店 1993
※小学館文庫『あぶない丘の家』内に収録
現代高校生真比古(まひこ)が、異世界からきた謎の兄・安曇とともにさまざまな事件に巻き込まれるスラップスティック・ファンタジーシリーズ。源義経に憧れる真比古は源平時代にタイムスリップし、頼朝・義経兄弟の悲劇を見届けます。ことあるごとに真比古のまわりの頼朝びいき・義経びいき・平家びいきの歴史マニア達が熱い主張をぶつけ合うので、時代の構図や人物関係が多面的に捉えられます。さしずめ大人向けの歴史学習マンガといったところ。見どころは萩尾望都の美麗な「義経」!清く正しく美しい、いい意味でのステロタイプ正統派義経。NHK大河「義経」の滝沢義経にイメージがぴったり重なります。うっとり…。対する頼朝はむさいおっさん風に描かれてはいますが、その悲しい生い立ちや苦悶する胸のうちが克明に描き出され、作者の愛と思いやりがひしひしと感じられます。
★★★★★
  
平家物語シリーズ
(全4巻)
月の船、星の林
きらめく波の飛沫
らせんは時を越えて
風は時を奏でる

佐久間智代
アスカコミックス 角川書店 1996〜98
平家側(平敦盛、平知章)がメインの源平モノ。三巻目にしてやっと九郎義経(牛若)が出てきたな、と思ったらアチャー打ち切り。タイムスリップしてきた(らしい)弁慶や性格ワルそ〜な静御前など数多の謎と未消化の設定を残したまま…。出てくる源平キャラは総じてキャピキャピしてますが、軽いタッチながらけっこうヘビーなテーマが描かれてます。ストーリーはオリジナリティがあっておもしろいし絵柄もかわいいので歴史人物をアイドル視して盛り上がりたい皆さん(腐女子とか・・・笑)が楽しんで読むのに最適かも。しかしおまけページの平家キャラ女子高生ヴァージョンにはさすがにドン引き。お遊びとはいえこれはイタいわ。
★★
  
源平紅雪綺譚

大竹直子
アスカコミックス
角川書店
(再版・小池書院)
1996
(再版2007)
「青蓮華(平経正の稚児時代)」、「源平紅雪綺譚(敦盛の最期)」、「遮那王宵月記(遮那王鞍馬時代)」の三篇を収録した源平時代コミック。細部まで丹念に描き込まれた美麗な絵柄、悲哀ただよう濃密なストーリー。見ごたえ読みごたえともに十分ですが、その徹底したお耽美ワールドというか腐女子好みな展開は好悪の分かれるところかも。私としてはソッチ系はさておいて、まずは遮那王が骨のある美少年でかわいくかっこよく描かれてるので大満足です。ちょっと「ますらお」とカブってる感がなきにしもあらずですが。
★★★★   
リョウ
(全13巻)

上田倫子
マーガレット 集英社 1996〜99
女子高生「りょう」は実は幼児の頃にタイムスリップしてきた義経だった!そんな彼女と弁慶(美形)とのラブロマンスを主軸に平維盛(美形)と禁断の恋に落ちたり兄頼朝(美形)に襲われたり歴史を動かしたりする物語。絵はキレイだしストーリーもよく練られていて人気作だったというのもうなずけますが、すみません、私これダメ。ヒロインがとにかく致命的にウザい。見た目も性格も全然かわいくない。愛読者にはあれが魅力的にみえるのかも知れないけれど、いち義経ファンからすればあんなの義経を名乗って許される最低レベルにも達してない。ただのふつうの女の子、あるいはそれ以下。もてもてヒロインに自己投影したい少女読者や作者にとってはそのほうが都合がいいんだろうけど…。歴史という壮大な舞台で壮大な恋愛(逆ハーレム)を楽しみたいという独りよがりな願望は伝わってきても、義経という実在の人物に対する愛着や敬意はまったく伝わってこない。義経を汚すな!最後にフォローを。義経にとくに興味がない人、思い入れがない人が読めばフツーに面白いマンガだと思いますよ。(←棒読み)
   

時をかけた少女たち
「1186年の舞姫
〜静と義経〜」
<第3巻収録>

以下続刊

かやまゆみ
KCフレンド 講談社 1996〜
※文庫サイズコミック『時をかけた少女たち・平安〜鎌倉編)』も発売
日本史に登場する女性たちの物語を少女向けのわかりやすいマンガにした「歴史ヒロイン・シリーズ」。歴史の血生臭さ泥臭さを極力抑え、恋愛の機微をメインテーマに、甘くせつなく仕上げられています。義経と静御前の悲恋は第3巻に収録。「1186年の舞姫(ダンシング・クイーン)」というちょっとスゲエタイトルのわりにはごくごく画一的なあたりさわりのないストーリー。「あまりに有名だから創作の余地なし」とは著者の弁ですが、誰もが知ってるからこそ破天荒なことができるのでは?でも義経はさわやか美青年だし静もかわいく描かれてるから文句はない。ちなみにほかの源平キャラは第1巻に大姫と義高の「1183年のお婿さま」、第4巻に巴御前と義仲の「1184年の女武者」がそれぞれ取り上げられています。
★★★
  
妖狐伝 義経千本桜
(全4巻)

堤抄子
Gファンタジー エニックス 2000〜01
歌舞伎「義経千本桜」をベースにした歴史ファンタジー。やさぐれ系の妖狐の若者「白狐」がひょんなことから義経と邂逅し、非業の死をとげた彼になり代わって郎党をしたがえ平家の残党らと戦います。メリハリのある今風のかわいい絵柄で、ギャグも多くて楽しく読めますが、物語の黒幕が崇徳天皇だったり真の敵は有名な「あの」妖怪だったりといろいろ凝った設定で、奥深いテーマ性を感じます。強く優しい義経、心清らかな静御前、個性豊かな郎党たちと触れ合ううちに突っ張りながらもどんどん「イイヤツ」になっていく主人公がほほえましい。小姓の貂丸(てんまる)とのドツキ漫才も笑えます。
★★★★   
天離る

安曇もか
スーパービーボーイコミックス ビブロス 2004
※スーパービーボーイコミックス『愛しく冷たい君』内に収録
頼朝と義経のあぶない兄弟愛、弁慶と義経の濃すぎる主従愛を描いた、いわゆる「BL(ボーイズラブ=女性向け)」コミックの一作。濡れ場もばっちりありますです。そういうのニガテな人は即まわれ右でお帰りを…。でも歴史的背景や人物の心理が丁寧に描写されており、絵も細部に至るまで美しく、BLものとはいえちょっとした歴史コミックの風格で、読みごたえは十分にあります。私は元来BL系には懐疑的な人間ですがこの作品は思いのほかおもしろく読めました。ひたすら純粋に愛を乞う義経のいじらしさ、それにつけいる頼朝のいやらしさ(笑)…。とにかく義経さえ可愛くて義経さえ愛されている設定なら、とくに文句はありません。
★★★★
   
義経伝
〜桜吹雪に散りゆく恋〜

描きおろしアンソロジー
ピチコミックス 学研 2004
コミック:岡野史佳「天花の契り」/都筑せつり「花灯」/篠原烏童「終の住処と」/香椎オルカ「鞍馬山異聞」/冬森雪湖「浮き草の名」/たむら純子「光のどけき春の日に…」/霧島珠樹「弁慶譚 鬼の宴」
エッセイ:わたなべあじあ「女戦士と猛者の恋」/CHI-RAN「二人静」
ピンナップ:岩崎陽子/源義経の世界:手越原徹

豪華女性作家陣によるオール描きおろし義経アンソロジーコミック。“恋愛絵巻”と銘打たれただけあって静御前とのオーソドックスなロマンスや実は女性だった弁慶との悲恋などバリエーションゆたかな内容が楽しめます。しかし今風にアレンジされたキラキラゴージャス義経は私にはまぶしすぎる…。古きよき子供向け少女マンガの香りがする「天花の契り」が一番抵抗なく読めました。“清純派ヒロイン”静がいじらしいです。

★★   
紅蓮の義経記
(あかのぎけいき)

描きおろしアンソロジー
幻冬舎コミックス 幻冬舎 2005
田村由美(カバーイラスト)/碧也ぴんく「鞍馬山異聞」/乾みく「ブラリ義経妄想の旅(イラスト・エッセイ)」/猪川朱美「朝霧の笛」/世哉雅英「静がその日の装束には〜『義経記』より〜(イラスト・エッセイ)」/松山花子「大事なことは鞍馬で学んだ」/斎藤岬「タカラモノ」/梶原にき「道」/真崎春望「腰越状異聞 血涙賦」/源義経関連資料・義経の足跡を地図と年表で辿る
話題の女性作家陣によるオール描きおろし義経アンソロジーコミック。鞍馬の遮那王時代、静との邂逅、頼朝との確執、失意の都落ちなど「義経ワールド」を幅広く取り扱っています。ストーリー的にはごくオーソドックスなものが多いですが、シリアス、ほのぼの、ギャグ等バラエティ豊かな内容で楽しめます。
碧也ぴんく版遮那王のかわいさは特筆モノ。
★★★
   
流転の風

楢崎壮太
ウィングスコミックス 新書館 2005
運命とは変えられないものなのか――?数千年の時を経て、再び出会った平重盛と源義経。重盛は同じ歴史が繰り返されるのを止められるのか?楢崎壮太が描くもうひとつの源平ストーリー!
平家の不吉な未来を憂う青年重盛と、その平家を滅ぼす運命の少年義経の交流を描いたシリアスな転生ロマン。人気BL作家さん(らしい)ゆえ、もののみごとに美しい男達だけでストーリーが成り立ってます(でも「そういう」シーンはないからご安心あれ。…え?残念?)。宿命を背負った男達の葛藤というテーマはなかなか重くて引きこまれます。が、登場人物がみんな見るからに現代人なので源平モノという感じは全然しない…。
ちょいとネタバレ…終盤、兄頼朝(※出番なし)から追われる身となった義経は亡き重盛の形見であり平家の証である赤ピアスをつけて決然と去ってゆきます。「」義経にこだわる義経ファンには耐えられないだろうな〜こんなシーン。私はその件にはきわめてルーズなので気になりませんが。
★★
   
君いとほし
〜源義経恋絵巻〜

飴あられ
講談社コミックスDX 講談社 2005
想いはただひとつ。源義経・木曽義仲・那須与一。戦乱の世に花開いた、源氏の武士たちの至高の純愛ストーリー!
義経、義仲、那須与一という有名どころの「純愛」物語が華麗なタッチで描かれています。義経の相手はもちろん静、義仲にはおなじみ巴。那須与一だけがオリジナルキャラとのラブストーリー。鵯越で知り合ったアネゴ肌の猟師の娘といじられキャラ与一の姉弟のような関係がほほえましい。義経はいかにも少女マンガ読者がポッとなりそうな、ちょいワルだけど心優しいニクいやつ。当然とびきりの美青年!外見も内面も大人っぽすぎるので個人的な義経イメージとはちがうけど、静とのピュアな恋模様はいじらしくてキュンとします。義仲と巴は悲しいクライマックスですが、他の二作品はハッピーエンドなので読後感も温かです。
★★★
   
白虹〜義経異聞〜
(全4巻)

中村理恵
ボニータコミックス 秋田書店 2005
美貌の剣士・源義経は女!?女であることを隠し、源氏再興のため闘う源義経。彼女のまっすぐな心は弁慶、そして三郎をひきつける。平清盛の追っ手をしりぞけ、目指すは奥州藤原氏…!!美形がいっぱい!中村理恵が描く、絢爛豪華歴史絵巻!
帯コピーに思いっきり「美形がいっぱい!」と書いてある通り、キンキラ美形の弁慶や伊勢三郎や常陸坊海尊がことあるごとにヒロイン義経の危機を救っては虫酸の走るほど甘いセリフをささやいてくださるハーレクイン義経物語。恥ずかしーっ!そんな熱烈ラブコールを受けるヒロイン義経はひたすら一途なまじめっ子でちょっと地味ですが、可愛いし美人だし、バトルシーンではキリッと強いし、源氏の御曹司としての誇りや使命感、また女ならではのいじらしい微妙な心理も丁寧に描かれているのがポイント高い。史実&伝承をアレンジしたストーリー展開も堅実で嫌味がなく、義経=女という邪道な設定ながら内容は意外と王道な義経マンガです。でもメガネ男子な景時にはさすがにびっくり。
★★★
   
 
義経鬼〜陰陽師法眼の娘〜
(第1巻〜)

碧也ぴんく
月刊プリンセスゴールド  秋田書店 2014〜
鬼の兵法を体内に宿す娘・皆鶴と平家打倒を悲願とする九郎義経が合体事故!?義経となった少女と、彼女を守る男たちを描く歴史ファンタジー!
鬼一法眼の兵法を得るはずがなぜか法眼の娘・皆鶴の体内に取り込まれてしまった義経!分離の方法がわかるまで義経としてふるまうことになった皆鶴、そんな彼(彼女?)をとりまくゆかいな仲間たち(弁慶、喜三太、佐藤兄弟)…、というなんだかカオスな設定の物語ですが、主人公(皆鶴≒義経)はかわいいし義経は愛されてるし絵は美しいし、まずは満足です。長い連載になってくれることを期待します。
★★★
一般コミック
タイトル
著者
ジャンル 出版社 発表年(初出)
手塚治虫初期傑作集D
弁慶

手塚治虫
ハードカバー 小学館 1953
※1992年に小学館より再版
弁慶の波乱万丈の生涯を描いた手塚治虫の初期作品。気は優しくて力持ちな弁慶、アトム的イイ子の牛若義経、典型的な悪役頼朝。あくまでも絵本的世界なのでリアリティや重厚さを求めるわけにはいきませんが、こういう昔ながらの単純明快なヒーロー物語は義経ファン的には大満足。少なくともこの20年以上あとに描かれた「火の鳥・乱世編」よりはずっと素直に楽しめます。
★★★★
  
古典名作漫画選D
弁慶

太田じろう
―― 曙出版 1969
弁慶の生涯を、伝説に即しつつオリジナル色豊かにコミカルに描いた作品。数々の不遇に耐え、美女玉虫に恋焦がれ、各地を流浪する暴れん坊主・弁慶。五条大橋で牛若丸と出会ってからは、ダイジェスト的に話がちゃっちゃと進んでしまうのが残念。
★★
火の鳥・乱世編
(上下)

手塚治虫
文庫(再版) 角川書店 1978〜80
巨匠・手塚氏の一大叙事詩「火の鳥」、その源平時代編「乱世編」。ここに登場するのは傲慢、冷酷、自分勝手な極悪義経。直情家で政治的野心がないというピュアな面も一応フォローされてはいますが、全体的なイメージはやっぱりとほうもないワル。弁太、という弁慶を思わせるキャラが、そんな義経の横暴に振り回され苦しめられてついにキレ、最後に義経を…。前述作品「弁慶」との落差をお楽しみくださいと言わんばかりのヤな感じの主従です。ちなみに頼朝は旧作「弁慶」と見た目も性格もまったくおんなじ悪キャラ。逆に清盛は悪人に見えて実はいい人という、マンガにありがちなお約束キャラ。個性豊かな登場人物が多数登場しますが、極悪義経のインパクトの前にはすべてがかすむ。こういう義経もアリだとは思うけど、描写にまったく愛が感じられないのが寂しい。手塚先生、義経嫌いなのかな…。
★★
   
義経の赤い春

ひさうちみちお
ハードカバー 角川書店 1987
牛若と弁慶が五条大橋の決闘に至るまでを描いた物語。キーパーソンは牛若のすぐ上の兄・円成。平家打倒のため牛若を引き取り、ほとんど主役ばりに活躍(暗躍?)します。「義経記」からの引用エピソード(伊勢三郎との出会い、鬼一法眼の娘皆鶴との交流など)も多々ありますが、全体的にはほとんどオリジナルの物語。映画「五条霊戦記」とどこか通じるところがあるかも。しかし、淡泊ながらオカルティック、なおかつ艶めかしい独特の絵柄が印象的すぎて、読後に奇妙な後味の悪さが残ります。
★★  
歴史コミック
源義経
(全4巻)

堀江卓
A4版コミックス 講談社 1990〜91
「歴史コミック」シリーズの義経編。劇画タッチの濃い絵柄、骨太ダイナミックな物語展開…、マンガというよりは「読む時代劇」。ムササビを自在に操る鞍馬天狗、奥州に土着しているモンゴル人集団など、独特の設定もあるにはあれど、基本的には史実に即してきちんと書かれたマニュアル的大河ドラマです。
★★★
   
歴史コミック
劇画藤原四代

監修・永井豪/原作・大崎悌造
画・和田順一
コミックス 日本文芸社 1993
奥州の覇者・藤原一族!源頼朝を、そして朝廷をも脅かした“北の脅威”藤原氏の興亡の歴史とは!?
大河ドラマ「炎立つ」放送に合わせて描かれたと思われる、奥州藤原氏四代の物語。奥州の盛衰のあらましがざっとわかる教養マンガです。したがって義経の出番はそれほどない…けど、むさ苦しい男どものなかにあって終始好青年に、しかも何気にかわいく描かれているのがちょっとだけうれしい。
★★
   
吉次と義経
藤原四代の野望
(1巻〜)

原作・杉山光男/画・小島剛夕
少年キャプテン 徳間書店 1993
たぶんこれも「炎立つ」と連動掲載されたマンガ。吉次が鞍馬の天狗となって遮那王を教え導く物語。絵柄の泥臭さと時々出てくるポルノチックな場面には当惑しちまいますが、武芸に長けたしぶい吉次、一本気な遮那王、何やら腹に秘めてる頼朝など、一癖ありそうなキャラクター揃い。彼らがどうからんでゆくのか興味をそそられます。が、一巻(奥州くだりの途中)までしか出てない…
★★
  
歴史コミック
奥州藤原四代(青き蝦夷の血)
(第3巻)

原作・今東光/画・横山まさみち
コミックス 講談社 1994
奥州戦国時代の武将群〜今東光の歴史大作、初めてコミック化なる!!
「歴史コミック」シリーズの奥州藤原氏編。こちらも「炎立つ」に合わせての企画でしょう。原作小説を読むための入門編としてよいのではないでしょうか。
★★
   
安東 ANTON
(全3巻)

安彦良和
ノーラコミックス 学習研究社 1993〜95
炎の如く 源義経の忘れ形見、星若丸、見参――!!
奥州で育った義経の遺児・星若が、打倒鎌倉のため奮闘する物語。アニメーターでもあるこの作家さんの圧倒的な画力にはただただ脱帽、絵だけでものすごい説得力です。キャラクター勢も異色揃い。つねに能面をつけた不気味な北条義時、もーどうにもならんほどマッドなバカ殿頼家。彼らが星若をとことん追いつめ、いたぶるのだ。読みごたえ十分。十分すぎて、読後に何だか疲労感すら覚えます。
★★★
   
マンガ日本の古典
吾妻鏡
(上中下)

武宮惠子
文庫版コミックス 中央公論社 1994〜96
(2000年に文庫版として再版)
※04年に嶋中書店アイランドコミックス(全2巻)として再販
鎌倉幕府公用の記録書を物語化。源頼朝の実像に迫る
少女マンガ界の重鎮・武宮惠子氏が描く古典・北条氏の記録「吾妻鏡」。鎌倉幕府の草創期を手っ取り早く知る資料として重宝です。武宮氏の描く義経は純真で繊細な美形の優男。頼朝も美男に描かれてはいますが、冷酷でやな奴です。対して北条政子が「ウーマンリブ」の象徴としてやたらと持ち上げられているのは、原典に即して描けば当然の結果でしょうが、武宮氏の意向もかなり入っておりましょう。NHK大河「草燃える」とダブる(ような)シーンもあります。
★★★
  
マンガ日本の歴史
(第15巻)

石ノ森章太郎
文庫版コミックス 中央公論社 19?〜?
※1997年に文庫版として再版
「日本の歴史シリーズ」源平合戦の巻。頼朝は血も涙もない老獪な政治家として、義経は野心のないさわやか好青年として、従来どおりのイメージで描かれてます。時代背景を捉えるには一番の、スタンダードな歴史入門マンガ。この巻だけでなく全巻を通して読みたいところですが、全55巻。(ヒィ)
★★★
   
永井豪のサムライワールドI
豪談・武蔵坊弁慶

永井豪
ハードカバー 中央公論社 1998
※リイド社より再版
比叡山の破戒僧・弁慶とその兄弟子源空が、平清盛に取り憑いた魔人・安倍晴明と戦う物語。最後のほうでやっと牛若義経登場、そこからはあっというまに話が進んで晴明をやっつけ平家を滅ぼし奥州が滅び、弁慶と義経は意気揚々と一路大陸へ…ジンギスカンになるつもりなのね…。絵柄も話もひたすらダイナミックでテンション高くてお色気もちょっぴり、ついていくのが大変です。そりゃあキューティーハニーやデビルマンの人ですから。
★★
   
NHKその時歴史が動いた
宿命のライバル編

〜互いを認め合い
勝負を挑んだ英雄たち〜
文庫版コミックス 集英社 2004
小次郎敗れたり 決闘巌流島・宮本武蔵の執念(作画・鴨林源史)
激突武田信玄と上杉謙信 川中島の戦い、両雄決戦の時(作画・小川おさむ)
弟・義経を討て 源頼朝・武家政権確立への決断(作画・ながいのりあき)
秀吉・家康たった一度の直接対決 天下取りの知恵くらべ(作画・谷口敬)
さらば淀殿お初の決断 運命に立ち向かった戦国三姉妹(作画・柳リカ)
敵は本能寺にあり 光秀はなぜ主君信長を裏切ったのか(作画・たかや健二)

NHK人気番組「その時歴史が動いた」のコミック版。ドキュメンタリー色が薄まっている分純粋な歴史ドラマとして楽しめます。「弟・義経を討て」は義経討伐にいたる頼朝の言い分がよくわかります。頼朝視点なので義経が能天気キャラになってるのは致し方なし。でもおまけマンガで世界征服たくらむほどの思いあがりバカにされちゃってるのにはカチンとくる。
★★★
   
NHKその時歴史が動いた
策士・軍師編

〜知略と勇気を兼ね備えた
戦いの天才たち〜
文庫版コミックス 集英社 2004
肉を切らせて骨を断つ 織田信長捨て身の復讐戦(作画・池原しげと)
秀吉に天下を取らせた男 黒田官兵衛戦国最強のナンバー2(作画・谷口敬)
源義経・大水軍を奪い取れ!壇の浦の戦い、奇跡の逆転劇(作画・狩那匠)
真田幸村どん底からの挑戦 家康を追いつめた伝説の名将(作画・沖圭一郎)
坂本竜馬 幕末の日本を動かす(作画・柳リカ)
高杉晋作50倍の敵を制す必勝戦略 幕末長州奇跡の逆転劇(作画・大林かおる)
こちらは義経の「戦略(戦術)家」としての才能にアプローチ。その失脚の原因についても言及されてます。それにしても上記「宿命のライバル編」といいおまけマンガの義経はきまって性格が悪い。せっかく本編マンガで感動したってこれでチャラですわ。
★★★
  
NHKその時歴史が動いた
智将・猛将編
文庫版コミックス 集英社 2005
義経はなぜ死んだのか 源頼朝と奥州藤原氏の攻防(画・西田真基)
我が運命は民と共に 悲劇の英雄楠木正成の実像(作画・谷口敬)
武田信玄 地を拓き水を治める戦国時代制覇の夢(作画・ながいのりあき)
信長と道三 改革者を生んだ非情の絆(作画・小川おさむ)
関ヶ原合戦 家康なぞの大突撃ヨーロッパ製甲冑の威力(作画・狩那匠)
義経と頼朝の兄弟不和、その背景にある奥州藤原氏と鎌倉との息づまる攻防にスポットを当てた作品。絵的には義経が悪役みたいなキツい顔になっててちょっとアレですが、キャラ的にはピュアな好青年。よしよし。おまけマンガではサッカー選手義経と監督頼朝の息づまる攻防(?)が楽しめます。
★★★
   
NHKその時歴史が動いた
源平争乱・元寇編
文庫版コミックス 集英社 2008
源頼朝 富士川の戦い(作画・加藤礼次朗)
源義経 流浪の果ての悲劇(作画・春日光広)
蒙古襲来、竹崎季長の一番駆け(作画・池原しげと)
蒙古襲来、再びの撤退(作画・田辺節雄)
孝謙天皇と道教の許されざる恋(作画・井沢まさみ)
足利義満の日明外交(作画・ながいのりあき)
源氏再興に立ち上がった頼朝、平家を滅ぼした義経、それぞれの視点を通して源平争乱の時代の真相に迫ります。「富士川の戦い」では頼朝が聡明なイケメン棟梁に、「流浪の果ての悲劇」では義経が一途で純真な悲劇の英雄に描かれていて、どちらのファンにも納得の内容。ただしおまけマンガには衝撃の「デブ頼朝」「怨霊生首兄弟」が登場します。(笑)
★★★★
   
源義経

〜乱世を駆け抜けた
天才武将の一代絵巻〜


佐野絵里子
SPコミックス リイド社 2005
勇往邁進!源平時代を疾風の如く駆け抜けた天才武将・源義経の生涯を苛烈に美しく描く一代絵巻!
絵巻ふうの風雅な絵柄が味わい深い義経一代記。その数奇な生きざまがクールかつポエジックに描き出されています。哀しく激しく、そしてきりりと美しい義経のキャラクターがたまらなく魅力的。著者の解説コラムも収録されていて読み応えがあります。これをぜひ長編マンガで読みたい!
また同著者の短編コミック集たまゆら童子(リイド社)には、常盤御前の母性愛を描いた「寒雀」、牛若のヤンチャな鞍馬生活を扱った「閑日」ほか、源平時代にまつわる物語がいくつか収録されており、哀切な題材がほのぼの優しいタッチで描かれています。こちらもオススメ!
★★★★★
   
学習教養コミック
タイトル
著者
ジャンル 出版社 発表年(初出)
学習まんが人物日本史
源頼朝
〜源平の戦い〜

監修樋口清之/指導谷口五男
まんが田中正雄
学習まんが 学習研究社 1978
温厚で平和主義で慈愛に満ちたブキミなくらい「いいひと」頼朝さんが主役です。そりゃ子供に読ませる学習マンガの主人公をワルにはできませんよね。悪のすべては梶原景時ひとりが背負ってる。正義の味方・頼朝さんはかわいい弟義経を殺したにっくき奥州を討伐し、晴れて征夷大将軍となりました。めでたし、めでたし…?義経が舞台を降りれば頼朝の物語もそれ以上語る必要なしといった終わり方で、結局義経中心のストーリーのような気がします。
★★★
学習まんが人物日本史
源義経
〜平氏追討の戦い〜

監修樋口清之/指導谷口五男
まんが大倉元則
学習まんが 学習研究社 1981
ドングリまなこにぶっとい眉毛、マメダヌキのようなお子ちゃま(にしか見えない)義経が健気にがんばる一代記。ごくごくプレーンな内容ですが、他のマンガや小説では名前すらろくに出てこない全成(義経のふたつ上の兄)がちょっとだけどちゃんと出番があるのが貴重といえば貴重です(頼朝に「義経の言い分も聞いてやれば」と進言している)。
★★★
人物日本の歴史6
鎌倉時代@
源頼朝・源義経・木曽義仲

立案構成:笠原一男・小栗純子
シナリオ・柳川創造
まんが・もりゆき男
学習まんが 集英社 1984
頼朝・義経・義仲の三部仕立てで構成された源平合戦〜鎌倉時代のストーリー。三者それぞれの立場や言い分がわかりやすく把握できます。ただ、義経と義仲にはそれぞれ人間的魅力が加味されているので読んでて楽しいけれど、頼朝の描写はどうしても味気なくなりがち。おもしろいエピソードを持ってるわけでもなし仕方がないのか。書き手の同情も薄そう。
★★★
くもんのまんが
古典文学館シリーズ
義経記

まんが・岸野恋
学習まんが くもん出版 1993
ジュニア向け学習まんが、にしてはいささか少女マンガテイストが濃厚な義経一代記。義経様が美人(“美男”じゃないのがポイント)ですよー。女性キャラ勢よりおキレイですよー。後半なんかやられっぱなしで妙に色っぽいんでございます。ストーリーもとてもわかりやすくて読みやすいので初心者に最適。巻末には親切かつ冷静な解説もついてます。
★★★★
 
ドラえもん人物日本の歴史G
源義経
学習まんが 小学館 1995
ドラえもんやのび太といっしょに義経のコトをくわしく知ろう!というノリの学習マンガ。 ドラえもんたちがよってたかってカワイソウな義経に同情してくれます。同情するより弁護して〜!基本的な知識を手っ取り早く得るには最適の充実した内容で、これ一冊で義経の人物像と時代背景がおおよそつかめます。お子様から大人まで、幅広い層におすすめできる、頼れる一冊です。
★★★★
   
まんが人物・日本の歴史B
鎌倉〜室町時代

まんが・つぼいこう
学習まんが 朝日新聞社 1998
小学生の男の子女の子二人組が時の旅人になってさまざまな時代の歴史を知るシリーズの一冊。シンプルでかわいい絵柄とテンポの良いストーリー展開で読みやすい。歴史人物たちの描写も個性豊かでおもしろく、学習まんが特有の野暮ったさもなく、大人でも楽しく読めるシリーズです。マメ知識的エピソードも満載。
★★★
   
コミックス能の物語
鬼神あらわる
能楽ガイドコミック 檜書店 1999
※“コミックで観る能シリーズ”の一冊(姉妹編に『「恋ぞつもりて』)
オカルティックな能十曲をマンガで紹介するシリーズ。そのなかの「鞍馬天狗」に牛若こと遮那王登場です。孤独な稚児遮那王と天狗との情愛に満ちた交流が描かれていて、少女マンガタッチの大きな瞳うるうる遮那王が可憐です。
★★★
   
満点人物伝
こちら葛飾区亀有派出所
両さんの源義経

キャラクター原作・秋本治
漫画・谷川淳
監修・奥富敬之
学習まんが 集英社 2005
人気漫画「こち亀」の両さんをナビゲーターに、全戦全勝の軍事の天才・源義経の生涯を追う学習コミック。もっとも両さんの登場は最初の数ページとコラムの口絵のみで、メインの漫画はいたってシリアス。非情な時代に生きるにはあまりに純粋で不器用だった悲劇の英雄・義経の姿が情感豊かに描かれています。さんざん悩み、悲しみ、その果てに「…それでも私は私のようにしか生きられなかった」と晴れやかな表情を浮かべて消えてゆく義経の姿には泣けました。まさか学習まんがで泣かされるとは…。おすすめです。
★★★★
  
まんがヒーロー列伝
日本の歴史ライバル対決

まんが・かわのいちろう
河伯りょう/工藤ケン
監修・田代 脩
学習まんが 学習研究社 2005
織田信長と今川義元、徳川家康と石田三成など、日本史を変えたライバル同士の激突のドラマを集めたコミック集。そのなかの一編として「源義経VS源頼朝」が収録されています。源兄弟の確執を静御前の目線から描いた作品で、歴史マンガというよりはラブストーリー要素が濃く、劇画タッチの他作品のなかでちょっぴり異彩を放ってます。ヒロインの静御前は健気で強気でかわいらしく、恋人の義経も粗野だけど純粋(天然?)な美青年、頼朝や政子らも出番は少ないながらシビアさの中に優しさがにじむ味わい深い人物として描かれており、短い作品ですが、読後にほのぼのと温かい気持にさせられます。
★★★★
   
  コミック版日本の歴史P
源平武将伝
源義経

企画構成監修・加来耕三
原作・水谷俊樹
作画・瀧玲子
学習まんが   ポプラ社  2009
「コミック版日本の歴史」シリーズ第三期(古代編?)に源義経登場です。(ちなみに第一期は戦国時代、第二期は幕末)今風の絵柄でコミック化されているのでとっつきやすい。でも絵も内容も当たり障りのない無難な感じでイマイチ印象が弱く、義経ファンとしてはちょっと物足りないかも?逆に巻末の加来耕三氏による解説は、義経の生い立ちの紹介もそこそこに、義経が使った兵法・剣法を検証するやたらマニアックな内容となってます。マメ知識コーナーでも、義経は実は少年時代一度も奥州にいっていなかった?という衝撃の仮説が紹介されてます。
★★★
  
 
ゲスト出演コミック
源義経(源平)メインの作品ではないけれど、
サブキャラ・ゲストキャラとして義経または義経っぽいキャラ(笑)が顔を出しているコミックを集めてみました。
まだまだほかにもあると思いますので情報を寄せていただけるとうれしいです!

タイトル
著者
ジャンル 出版社 発表年
ドカベン

弁慶高校
武蔵坊・義経(キャラクター)
(24巻から登場)

秋田文庫全31巻

水島新司
週刊少年チャンピオン 秋田書店 1972〜81
誰もが知ってる野球マンガの名作に義経&弁慶登場!?主人公ドカベンこと山田太郎の所属する明訓高校ナインの前に立ちふさがった最強の壁、それが岩手県代表「弁慶高校」。岩手から甲子園まで徒歩でやってきた山伏姿のツワモノたちです。チームの要は四番打者の武蔵坊数馬、鋭い洞察力と常人離れした豪腕、そして謎のハンドパワー(!)でボールを操る無敵キャラ。チームのエース・義経光もクールな美形。立往生や八艘飛びといったお約束エピソードも見せ場としてきっちり盛り込まれ、後日談では武蔵坊と義経の強い絆が垣間見えます。敵キャラとはいえ、ふたりとも結構いい役どころ(とくに武蔵坊)。この作品、大まかなあらすじは知っていたけどきちんと読んだことはなかったので、これを機に読破したいと思ってます。
★★★
   
うる星やつら

「父よあなたは強かった」
(小学館文庫第2巻収録)

小学館文庫全18巻

高橋留美子
少年サンデー 小学館 1978〜87
宇宙一の煩悩男・諸星あたるとその押しかけ女房・ラムちゃんが巻き起こす奇想天外ギャグワールド。言わずと知れたこの超有名マンガに、準レギュラーキャラ・クラマ姫(カラス天狗の姫)の父親という設定で牛若丸が一度だけ登場します。クラマ姫の差し金で平安時代にやってきたあたるは、平家打倒を心に誓うストイックな美少年・牛若に女を教えてやろうといらぬ世話をやき、かわいいねーちゃんをひっかけるべく京の都に繰り出すも…。ヘンテコな連中が続々登場する中で牛若はあくまでも凛々しくかっこいい。たまに崩れるけどそれもまたよし。そりゃクラマ姫もファザコンになろうというもの。まわりでガチャガチャ言ってるカラス天狗たちもかわいいです。高橋先生、義経マンガ描いてくれないかな〜…。
★★★★
   
幽遊白書

死々若丸(キャラクター)
(第9〜10巻に登場)

ジャンプコミックス全19巻

富樫義博
少年ジャンプ 集英社 1990〜94
不慮の事故で命を落とした不良少年・浦飯幽助が霊界探偵になって活躍する、これまた超有名な人気少年マンガ。中盤の「暗黒武闘会」編にて“御伽草子チーム”のリーダー・死々若丸(=牛若丸)が登場します。ちょっぴりキザで生意気な美少年(でも怒るとツノが生えてきちゃう)で、「きゃあ〜若さま〜」と黄色い声を放つギャル応援団なんかもいて、敵キャラとはいえそれなりに読者人気もあったようで、義経ファンとしてはこの扱いはまあまあ満足。ところでこの作品、「蔵馬(クラマ)」とか「飛影(ヒエイ)」とか「左京」とか、キャラ名に京都付近を連想させるものが多いのはなぜ?蔵馬にからんでくる「鴉(からす)」(カラス天狗?)なんてのもいて、なおさら気になる。
★★★
   
ギャグマンガ日和

第5幕「呪いの刀」
(第1巻収録)

ジャンプコミックス1〜巻

増田こうすけ
少年ジャンプ 集英社 2000〜
歴史上の出来事から日常の何気ない小ネタまで片っ端から脱力ナンセンスギャグにしてしまう「ギャグマンガ日和」。第一巻に五条大橋ネタが載ってます。刀をめぐって争う義経と弁慶、その刀からなぜかキモイ毛がわさわさ生えてきて「あげる」「いらん」と押し付けあう、…ああ〜説明しても意味がない、読んでもらわねばあのおかしさは伝わらない。源平ネタは目下この話のみですが、ほかにも歴史ネタがいっぱいあるので要チェック。でも冗談の通じないor耽美好きな歴史ファン(聖徳太子を『日出処の天子』イメージで思い描いている人等)にはおすすめできません。ジャージ着た聖徳太子が「えびぞり摂政ジャンプ!」って叫んでる。松尾芭蕉はつねにスランプに陥って弟子の曽良くんに殴られてるし、大石内蔵助はアニメソング歌いながらお風呂に入ってて討ち入り遅刻するし、あまりにもバカバカしいそんな奴等が私ははっきりいって大好きです。ここでは★4つですがマンガ自体は★5つ満点。
★★★★
  
たまゆら童子

「寒雀」「閑日」
(第1巻収録)

SPコミックス1〜3巻

佐野絵里子
コミック乱TWINS リイド社 2004
時は平安〜鎌倉、京の都の小さなお堂・如意輪堂に現れる不思議な童子が人々の悩みに寄添いその悲しみを癒してゆく珠玉のファンタジー短編コミック集。第一巻に、義経の母・常盤の少女時代と母性愛を描いた「寒雀」、牛若の鞍馬山時代を描いた「閑日」が収録されてます。 片時もジッとしていられない元気のかたまりのようなヤンチャ小僧・牛若がかわいい!同著者の義経一代記「源義経」と併せて読めばその成長ぶりがうかがえて感慨もひとしおです。ほかにも平清盛と重盛親子、平敦盛と熊谷直実、俊寛、源頼家、建礼門院徳子といった源平人物の物語が多数収録されていて、いずれも読み応えあり!悪役扱いされている人物、無能呼ばわりされている人物、また名もなき市井の人々にまで優しい救いの手がさしのべられていて、その魂が童子によって解き放たれてゆくさまは何ともいえない清涼感です。
★★★★★
   
時を翔る絵師

「心象の雪(前編後編)」

佐野絵里子
幻想ファンタジーシリーズ 集英社 2008
源頼朝と桓武天皇――。時を超えて二人の為政者に同じ苦悩を見た絵師は…。
アンソロジーコミック集「幻想ファンタジー」にて連載された佐野絵里子さんの「時を翔る絵師」シリーズのコミック集。その一遍「心象の雪」に源兄弟の哀切な物語が描かれています。死を目前にして義経の亡霊に悩まされる源頼朝は、呼び寄せた“時を翔る”絵師に弟への恐れと憎しみを打ち明けますが、その様子に複雑な胸のうちをみた絵師は、はるか数百年の昔、京の都で同じ悲劇に見舞われた桓武天皇とその弟早良親王の顛末を語り、為政者として他人ばかりか己をも騙して生きてきた頼朝の頑なな心を解きほぐします。義経への愛と憎しみ、誰にもいえない葛藤と孤独が、雅やかな筆致で優しくしかも鋭く描き出されていて、しみじみと深い感動がこみあげる名編です。人生の最期にようやく安らかな思いを得た頼朝、その静謐なクライマックスには涙が止まりません。また数コマのみの登場ですが兄を一心に慕う義経の可愛さ健気さにも萌えまくりです。(笑)表紙・裏表紙の可憐な貝合わせの絵にも注目です。あらこんなところに義経(&頼朝)が♪ほか平経正・経俊・敦盛兄弟を描いた「別れの管弦」をはじめ、さまざまな時代の人々の孤独に寄り添い悲しみを癒す絵師の物語が全九話(特別読切含む)収められて読み応えたっぷり!
★★★★★
 
為朝二十八騎

BEAM COMIX全2巻

佐野絵里子
  
fellows!   エンターブレイン  2009〜11
左腕が右腕よりも12センチ長い少年は、誰よりも強く、遠くへ、弓を引いた。これは日本史上最強の騎兵の物語。人気絶好調の平安絵師・佐野絵里子による悲劇の英雄活劇が始まる!
義経が敬愛したという叔父・鎮西八郎為朝の若かりし日を描いた華麗なる時代絵巻。無敵の弓の名手、源氏きっての伝説の偉丈夫が、力強くも流麗なタッチで描き出されます。無邪気で愛情豊かなその素顔、胸のすく骨太な生きざまに魅了されることまちがいなし!義経の母・麗しの常盤御前もゲスト登場♪
同著者の高校生祈祷師・青桐志貴が活躍する短編集加持祈祷うけたまわりマス (BEAM COMIX)も平家にまつわる怪談“耳なし芳一”を描いた掌編「水底の宴」が収録されており必読です。
★★★★
  
鬼灯の冷徹

源義経(キャラクター)
第20話(3巻)より登場

モーニングKC1〜巻

江口夏実
 
週刊モーニング  講談社 2011〜連載中
閻魔大王の第一補佐官をつとめる鬼・鬼灯(ほおずき)の冷徹なる仕事っぷりを描くギャグマンガ。地獄を舞台にギャグマンガ。その着想の時点で作品の勝利は約束されました。登場する動物たちが皆やたらめったらかわいいのもポイント高し。地獄の治安を守る烏天狗警察の一員として、我らが義経が登場します。(大天狗僧正坊の判官びいきによる縁故採用)非常に愛らしい牛若丸の姿をしていて、雑誌やポスターのモデルとしてひっぱりだこ。しかし当人はマッチョに憧れ、筋肉を鍛えるため横笛ではなくアルプホルンを吹いたり、プロテインを飲んでじんましんを出したりと、無駄な努力を重ねてます。仕事ぶりはきわめてまじめで性格も温和、しかし「ひょろい」とか言われるとキレます。弁慶も警察寮の寮長として登場しますが、登場するなり鬼灯様にむこうずねを強打されます。「泣くかな?」という理由で。とにもかくにも義経がキュートでアイドル扱いされてるのが義経ファン的にはひれ伏したくなるくらいありがたい。メインキャラではないので登場頻度は少ないですが、今後もちょこちょこでいいので登場させてあげてください。2014年にアニメ化もされました、やっぱり登場回数は少ないけど義経様超カワイイよ!
★★★★★
ライブラリィへ